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生きた英語から学ぶ① フェデラー選手の引退試合直後のインタビュー

 テニス界の貴公子、ロジャー・フェデラー選手が、数々の輝かしい活躍ののち、先日引退されました。私にはテニス経験はありませんが、時にバレエにも例えられた彼の優雅なプレーには、お蝶夫人や藤堂さんのイメージを重ね合わせつつ(わかってくださる方、同世代ですね!)、テレビの前で長年応援してきました。

 

 引退試合となった2022年9月のレーバーカップフェデラー選手がダブルスを組む最後のペアとなったのが、歴史に残る名勝負を繰り広げてきたライバル、ラファエル・ナダル選手だったというのが、最っ高に胸熱でした。

 そして試合直後、偉大なフェデラー選手へのインタビュアーとなり得たのが、やはり王者としての苦悩をも知り尽くした元世界ランク1位、ジム・クーリエ氏だからこそ、というのもさらに胸熱でした。

 

 そのインタビュー。英語学習の視点でもとても勉強になったので、元高校の英語教師目線で少しご紹介したいと思います。

 特に中学生にとって難しいかなと思う部分には解説を付けました。解説が長く感じるかもしれませんが、セリフを載せているので、どうしても行をとってしまっています。実際には、ご紹介するのはインタビューの中盤1分間ほどの箇所となります。

 解説に興味がなければ、もちろんその部分を読みとばしてくださいね。自力で聞き取ってみるなり感動的な雰囲気を感じてみるなりといった方法で、それぞれに楽しみながら、生の英語に触れる機会になったら嬉しいです。

 

☆☆☆☆☆☆

 

※動画は、beIN SPORTS Asia 公式YouTubeで見ることができます。3:30から1分間ほどの部分の解説です。

インタビュー中盤(3:30あたりから)で、クーリエ氏が

It’s been* an amazing ride.  It’s been incredible to* watch this journey that* you’ve been on.

と切り出します。

 

① It’s been an amazing ride. 

「それは見事な乗り物でした。」

ride は「乗り物」のことです。私たちもフェデラーという乗り物に乗って、数々の素晴らしい勝利を一緒に経験させてもらったよ、と言いたいのだと思います。

出だしの2文とも、It has been(現在完了形)で始まっています。「amazing や incredible の状態が、ずーっと続いてきました。」というニュアンスです。

 

② It’s been incredible to watch this journey that you’ve been on.

この2文めは it - to 構文。It を「それ」とは訳さないで読み進めましょう。関係代名詞 that は、どのような journey かを詳しく説明しています。

 

 - It’s been incredible to watch this journey that you’ve been on.

「信じられないほど素晴らしいことでした」

 

 - It’s been incredible to watch this journey that you’ve been on.

「この jorney を見ることは信じられないほど素晴らしいことでした

 

 - It’s been incredible to watch this journey that you’ve been on.

「あなたがこれまでずっとたどってきたこの journey を見ることは、信じられないほど素晴らしいことでした

 

という感じですね。

 

 ところでこの2文で使われている amazing と incredible。どちらも「驚くほど素晴らしい」という意味です。この意味でまず思い浮かぶのは nice や wonderful かもしれませんが、「見事な」とか「信じがたいほど素晴らしい」などと言い表したいときには、ぜひ覚えてこれらも使ってみてください。

 

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さらにクーリエ氏は、

It started as a boy playing tennis. You turned into* a junior champion, then a world champion.  And you became a sporting icon*.  What has that journey been like* for you?

と続けます。

 

③ It started as a boy playing tennis. 

「それ(this journey)はテニス少年として始まりました。」

 

④ You turned into a junior champion, then a world champion. 

「あなたはジュニアチャンピオンへと変化をとげ、それから世界チャンピオンになりました。」

 

⑤ And you became a sporting icon

「そしてあなたはスポーツ界の象徴となりました。」

最近はカタカナでも使う icon という表現。このような訳になります。

 

⑥ What has that journey been like for you?

「その journey はあなたにとってどのようなものでしたか?」

「好む」だけではない like。会話でよく使われます。

 

☆☆☆☆☆☆

それに対してフェデラー選手は、一気に

It was never supposed to* be that way.  It’s just happy* to play tennis and spend time with my friends, really, and it ended here, so it’s been* a perfect journey.  I would* do it all over again*.

と答えました。そして涙で言葉をつまらせる、感動的なシーンです。

 

⑦ It was never supposed to be that way.  

「それ( that journey )がそのように(世界チャンピオンにまで)なるとはまったく思っていませんでした(予想されませんでした)。」

 

⑧ It’s just happy to play tennis and spend time with my friends, really, 

「友達とテニスをして過ごす時間がただ楽しくて。本当に。」

この文は、少し違和感のある文になっています。happy という単語は人間の感情を表すので、もしこの文が I’m happy to play tennis… だったら正しい文だったと言えます。しかしこの文は、It ( = テニスをすること ) is happy…。人間の感情を表すはずの happy という単語が、人間以外のものを主語として使われたため、不自然な文となっています。でもまあ、何を言おうか考えながらしゃべっていたら、こうなりますよね。気持ちが高ぶっていたり緊張していたらなおさらだと思います。

 

⑨ and it ended here, so it’s been a perfect journey.  

「それで最終的にこうなった。だからずっと完璧な journey だったんだ。」

ここでも現在完了形が使われているので、「テニスを始めてから今まで、ずーっと完璧な journey でした」というニュアンスです。

 

⑩ I would do it all over again.

「できるならまたもう一度最初から同じことをしたい。」

この would。『現実とは違う話を仮定しています』の合図として、will ではなくあえて過去形 would が使われる、という『仮定法過去』という文法です。高校生も苦労をする文法ですが、難しいと感じる文法ほど、机の上で考えるのではなく口に出して練習をし、親しみを持つところから初めてみてほしいと思います。

 

 それにしても、長年ケガとも戦いながら、苦難も多かっただろうことは容易に想像がつきますが、それでもこの journey をもう一度最初からやりたい、とサラッと言えてしまうフェデラー選手。しびれました。

 

☆☆☆☆☆☆

 

このあとフェデラー選手は感極まって少し沈黙。そんな彼を理解し黙って待つクーリエ氏もステキでした。そしてフェデラー選手は、観客の愛情に満ちた拍手に視線を投げかけてから、

It’s been great.  It’s been so much fun.  It’s been amazing.  Thank you everybody.  I’ve had so many people cheer me on and you guys here tonight means the world.  

と続けます。

 

 なんとなく意味を汲み取れると思うので解説は省略します。単語や文法の理屈よりも、フェデラー選手の声の温度や、かみしめるような丁寧な口調、清々しい笑顔と涙を感じてみてください。

 

 特に最後の、

You guys here tonight(主語)  means(動詞)  the world.  がいいですね。(文法的に正しくは mean です。)

 感謝の言葉と言えば Thank you. しか私には出てきませんが、これほどまでに様々な言い方があるんだなと、とても勉強になりました。

 

☆☆☆☆☆☆

 

 最後に。

 ところどころに出てくる journey という単語。どのような意味でとらえながらフェデラー選手の言葉を聞きましたか?

 そう、「旅」ですよね。

 自分の人生を「旅」と表現できる。これはある分野を苦労の末に極めたり成功をおさめたりした人こそが使える、重みのある単語ではないかと思います。

 フェデラー選手のテニス人生を、なんの躊躇もなく journey と表現したクーリエ氏のこのような言葉1つとってみても、フェデラー選手への敬意が感じられ、胸を打たれました。フェデラー選手自身も、この時点でまだ41歳と大変若いですが、この単語で当たり前のように表現できるものをすでに達成しただなんて、本当に素晴らしいことだなと思います。

 

☆☆☆☆☆☆

 

 今回ご紹介するのは以上です。

 ここまでの解説を読んだうえで、もう一度3:30あたりから1分間聞いてみてください。最初に聞いた時よりも、聞き取れる表現が増えている人もいるのではないかと思います。

 beIN SPORTS Asia 公式YouTube

 

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 ここまでお読みいただいて、皆さん、お気づきでしょうか。このやりとりで使われている単語や、It - to 構文や現在完了といった文法は、中学校や高校で習った英語表現で理解が可能なはずのものばかりです。

 忘れてしまっていたものがあってもいいんです。おわかりいただきたいのは、「英会話と学校で習う英語は違う」のではなく、会話には、学校の英語の授業で増やす知識も絶対に必要だ、ということです。日本語もそうやって覚えてきましたよね。

 

 ただし、学校で得た知識しかなく、それだけでリスニングやスピーキングもこなそうとしても、私がそうであったように、なかなかうまくいきません。偉そうに解説なんてしていますが、私にとってはいまだに、リスニングとスピーキングが大の苦手。中学校に入学後から英語の勉強をし始めて、30年以上も経ったのにです。えぇフェデラー選手より年上です。

 

 しかし、まずリスニング力や発音力を培った上で、語彙力や構文力を着実に積み重ねていくと、本当に使えるものになっていきます。

 中学生以上の皆さん、英会話力の習得や向上には会話練習の継続はもちろん必ず必要なのですが、学校の勉強もしっかりやりましょうね。

 

 ほんの数年では流暢な英会話ができるようにはならないので、生徒さんにとっても保護者の方にとっても、途方もなく長い道のりに感じるかもしれません。でも、がんばりましょう!自分の英語人生を、いつか journey と言って振り替えられる日を目指して。